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デザインができるまで guess I'll hang my tears out to dry

デザインができるまで guess I'll hang my tears out to dry

舞台の為の椅子はダンサー達と共に舞台上で照明に照らされ、音楽という時間の中に生きることで、ひとりの表現者のように振る舞います。そのときの椅子は椅子であり、椅子ではありません。それは決して比喩的な意味だけではなくて、実際に、百八十度ひっくり返され、塀のよう重ねられ、ダンサー達によじ登られ、時に自立することさえ許されないことさえもあります。そして面白いことに、こうやって椅子が非日常的な椅子の役割を演じることで、同時に椅子の本質が炙り出され、今度は逆にその椅子は道具として、代え難い美しさを纏い始めています。 この椅子もデザインを行うにあたって、まず、椅子に非日常的な役柄 - 後脚を壁に引っ掛けて、吊るされて収納する - を与えました。そうすることで椅子の形状は溶解し、機能は白紙へと還元され、それまで見えなかった機能とは乖離したカタチが浮かび上がってきます。 この椅子の個性を決定づけた斜めの貫は、ヨーロッパの古民具の椅子にもみられる極めて機能的な補強としての部材と共通しています。非日常を演じることで生まれた個性が一方で無意識で作られた民具と共通性を持っている矛盾にこの椅子の魅力があるのかもしれません

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