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Lagom:ほどほどインテリアVol.14

Lagom:ほどほどインテリアVol.14

ダリアの物語

ここ数日、暖かな毎日が続いております。
家の小窓から見えるお隣の庭の端っこには、
残り雪に埋もれながらも、小さくとも蕗の薹が
青空にむかって元気よく顔をだしておりました。
ここ軽井沢にもようやく春が訪れたようです。
欄の思い出話をさせて頂いた数日後、
大切なお客様でもあるU様より一通の
お便りを頂きました。
それは、
お父様とお母様のダリアの物語。
昔、U様のお母様はご自宅のお庭一面に、
どうしてかと不思議に思うほど、
様々な色や形のダリアを大事に大事に
育てていらっしゃたそうです。
ご家族にとって大切なお母様が亡くなられた後、
懸命にお仕事に勤しんでいらっしゃったお父様が
そして、何より、花々には無縁だと
思われていた、そのお父様が
お母様が残された大切なダリアを
引き継ぐかのように大事に育てられました。
そして、そのダリアをお父様はお母様に
毎日のように供えられていたそうです。
それを知ったU様は勿論、驚かれたと同時に
心にこみ上げる嬉しさを感じずにはいられなかったと
書いて下さいました。
何故なら、それはお父様なりのお母様への想いだったからこそ。
そしてその後、お父様がお亡くなりになり、
U様もダリアを見ることなく過ごされていた頃、
丁度、去年、ダリアがブームなのかと思うほど
お花屋の店頭一面にダリアが並んでいたそうです。
U様は数本ダリアを購入し、部屋に飾り、改めて
ダリアの花言葉を調べてみたり、
ああ、なるほどねと頷いてみたり、
お母様の面影を辿ってみたり重ねてみたり・・・
今頃になって可笑しいけれど、ダリアは母の花なのだ、と、
そう思うことにしました・・・そう書いて下さいました。
お父様もお母様も亡き後、お宅は手放され
お二人の大事なお庭も消えてしまいました。
それ以来、そのことはずっとU様の
心の中に静かに眠っていそうです。
今になっても、今だからこそ切なく感じる私の
思い出です・・・そう最後に書いて下さいました。
私は何度も何度もU様から頂いたこのお話を
読み返しました。
強く揺さぶられる心をおさえつつ、
こみ上げる何かを感じつつ、
表現できない透き通るようなおもいを抱え
数日を過ごしました。

 

そしてある日、
「私のシークレットガーデンにいらっしゃい。」
そう言ってくれた彼女の声を突然に思い出しました。
続く
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