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- ガラス作家 東 敬恭さんの工房Azzurro Glass Studioはスウェーデンのダーラナ地方のような美しい工房でした。
信越から琵琶湖方面へ車を走らせ、古都へと近づくほどに歴史的史跡を指す看板が増えていきます。武将の名前や合戦の跡地を横目に眺めているとついつい、悠久の時に思いを馳せ、高揚感が高まります。さらにナビゲーションに導かれながら東さんの工房に近づくと近畿地方にもこんなにも田んぼがあるのかと柔らかな緑色に染まった美しい田園地帯が広がります。細い道を進むと田んぼに浮かぶ浮島のように東さんの工房がありました。
ガラスを溶かす大きな窯のあるいかにも使いやすそうな工房にはショップと事務所が併設されて、木陰を作る庭には、クロスがかけられたテーブルにサンドウィッチとお茶が用意されていました。サンドウィッチとコーヒーを頂きながら、東さんの創作のお話を伺いました。
刻々と変化するガラスの一瞬をも逃さない鋭い眼光と対照的な柔らかな語りでガラス作家としてのきっかけを話してくださいました。
最初は、ものづくりであればなんでも良かったんですよ。
家具屋に勤めてみたり、インテリアにも興味を持っていたのだけれども何かが違うって。
やっぱり考えるよりも作る方が面白いのかもしれないと思って。
父がデパートに勤めていたんです。
陶器が好きで、週末には個人的に民芸店を営んでいました。手伝いをしたりする際に、陶芸をみる機会があったり。そういった父ですから、ものづくりの道に進む時にも親の理解は受けやすかったですね。
そう考えると原点は父の民芸店かもしれませんね。
だからかもしれませんね。テーブルウエアーを作ろうと。
陶器を作るのか、それともガラスを作るのかって。
色々と食器屋さんをまわってみましたね。
瀬戸や多治見などの産地もまわりました。
その中でちょうど若いガラス職人を探していたということで
オリジナルデザインもして制作も行う会社に就職したんです。
初めてガラス工房を見させてもらった時は衝撃を受けました。
ガラスという素材を使ってカタチができていく過程がもう面白くて。
それから6年間、職人として働かせてもらいました。
個人工房を始める前の6年間の職人時代というのが今のガラス作家としての自分の基礎になっています。見て覚える、体で覚えるという修行時代です。
- その後、作家として独立されるんですね。
個人工房を始める前にスウェーデン人ガラス作家のエヴァさんのワークショップを受ける機会があったんです。すでに職人としてのキャリアがあったので技術的にはある程度自信があったんですけれど、エヴァさんはその頃の自分とは全然違って。
職人はデザイナーが描いたものを早く正確に作ることが良い職人なんです。
エヴァさんから、作家はもっと自由に思い描いてガラスの材料の特性を生かすという姿勢を学びました。
たった3日間のワークショップでしたが大切な経験でした。
すでに職人として働いていたからこそ、より体にスッと染み込んできた記憶があります。
とにかくガラスというのは流動的なんです。
だから今はアドリブで作ることが多いですね。
職人として働いていた頃は、デザイナーが描いた製図通りに作ることが
良い仕事をするということだったんです。
だから最初はガラスをコントロールしようとしていたのかもしれません。
それがだんだん月日を重ねていくうちに
ガラスに身を委ねて任せるようになってきました。
- 東さんの作品は、良い意味で重さがないというか。軽快感がありますね。
どうしても技術が上がってくるとついつい技巧的表現の方向へ行きがちなんですけれど
今更、過去の技術を模して、この時代に作る必要はないのかなと思います。
今、生きているこの時代に感じるものを表現しなくてはいけないと思います。
だけれども単にシンプルというのも考えものだと思います。
シンプルなデザインと一言で言っても、最初からシンプルなものを作るというのもどうなのかなと思います。色々な表現を試してみて、失敗して、数ある技術も試してみて、そういった試行錯誤のプロセスを経て、削ぎ落とされていって行き着くシンプルでなくてはいけない。
若手作家の中にはガラス造形に限らずシンプルなもの、過去にある形をなぞるようにリメイクするような方も多い気がしますが、色々とその人なりに紆余曲折しながら自分の形を作り上げていく方が絶対面白いと思うんです。
- ガラスを作ることにおいて大切にされていることは何かありますか?
ガラスというのは自分では制御できない癖があって、無理矢理カタチ作ろうとしないことが大事なのかもしれないです。
究極は触らないで作ることですね。
物理的な法則に従って作ることが美しさの秘訣かもしれません。
- 理想のガラスとは、なんですか?
基本は楽しんで作ることが一番大事ですね。
作るガラスのクオリティーが上がってくるともっと技術を高めたくなる。
そういったこだわりも楽しさですね。
http://www.azzurro.studio