コンテンツにスキップ
CREATER INTERVIEW 005  SEKIOMOCHA

CREATER INTERVIEW 005 SEKIOMOCHA

オリジナルのキーホルダーやバターナイフ、ジャムスプーン、ケーキサーバーの製作をお願いしている、おもちゃ作家sekiomocha主宰 関さんのアトリエを訪ねました。



-       おもちゃ作家になろうとおもったきっかけを教えてください。



んーと、なんですかね。

僕は工業高校の建築科で学んでいて、木工も建築として捉えていたんですね。

それから、高校生時代から図面を描くのが好きでしたね。


仕事場で製図台に向かう関さん


-       関さんのインスタグラムを読ませてもらうと製図が好きと書かれていましたね? 僕は、製図が大嫌いなんです。笑 関さんにとって図面の魅力って何ですか?



図面でしかわからないことってあるじゃないですか。角度や長さで導き出される形状がアイデアを明確にしてくれます。きっと、図面は“作ること”に直結している部分が好きなんだと思います。



-       なるほど。ものを作るときは製図から始めるのですか?



いいえ。落書きからスタートします。積み木やパズルだったら組み合わせる必要があるので、角度だったり長さを法則に当てはめていくのですが、スケッチの段階の、もしかしたら面白い組み合わせになるかもしれないという程度のまま、図面を描き始めてスケッチの矛盾点を解決していくことが多いですね。そうやって、基本的にずっとおもちゃのことを考えています。例えば、どうやったら猫がパズルになるかとか?常に、お題が頭の中にあります。猫だったら、3つの同じ曲線を一匹の猫の形に入れ込むという図形的、数学的なしばりを課します。そのルールの中で猫らしい形をスケッチでまずは描いていきます。それで、猫としてあらしめているギリギリの形の中で、パズルのように組み合わせられる線を探していくんです。スケッチを繰り返すと、パズルになるかもしれないという瞬間がきます。そうしたら図面にしていくんですが、パズルとしては成り立つのだけれども、猫らしい形が崩れてしまいます。そうしたら今度は猫らしい曲線に修正していきます。そうすると今度はパズルとして成り立たなくなっているので、、、この繰り返しですね。



-       方程式を解くような方法でデザインを進めるのに答えが猫というのがとても面白いですね!

道具のデザインって機能が形態に従うということが基本となっていますよね。大学で最初の課題がハンマーをデザインすることだったんです。スケッチをして実際試作をして、釘を叩いてみる。使いにくかったら削って調整して、形態を探していく。とても良い授業だったなと今でも思います。ちなみにその次はドライバーを作る課題でした。だけど機能だけを考えても魅力は生まれないと思うんです。関さんの方程式と猫のバランスが、魅力あるデザインの秘密かもしれませんね。ところで、今回お願いしているキーホルダーは軽井沢の動植物をテーマに制作をお願いしていますが、パズルのようなしばりがありませんが、作っていていかがですか?



はい。めちゃくちゃ、のびのび形を決められます 笑



-       パズルは、数学的要素と造形的な要素が組み合わさった面白い創作ですよね。どうしておもちゃだったんですか?



18歳で社会にでたんですけれど、図面を描く仕事がしたくて色々な仕事を経験しました。それに、昔から友人と遊ぶことが好きで、なんとなくおもちゃを作りたいなという気持ちはあったんです。それで木のおもちゃが有名なドイツに行っておもちゃ作りを見たいとお金を貯めたんです。



-       どれくらいドイツに行かれていたんですか?



1年です。ドイツは、基本的に木のおもちゃじゃないですか。

ドイツのおもちゃを制作する木工の現場を見てまわりました。

ドイツのエルツ地方には山奥におもちゃだけを作っている村があったり、楽しかったですね。

それから、ドイツ語の勉強のために通っていた語学学校で知り合ったドイツ人の方が幼稚園に勤めていたという偶然からドイツの幼稚園で三ヶ月間働く機会を得たんです。実際にドイツの子供達と遊ぶことで、気がついたこともありました。幼稚園にあるおもちゃは、日本のおもちゃと違うからルールは僕にはわからないんですよね。そうすると子供達は、勝手に僕がルールをわからないことをいいことに自分たちが絶対勝つ自分たちのルールで遊ぶんです。自分で遊びかたを決めることができる自由なおもちゃを作りたいなと思いました。

幼稚園には、ドイツらしいインテリアブジェのような美しい造形のおもちゃもありました。だけれども誰も遊んでいなかったんです。大事に箱にしまわれているけれど、、、、、

飾っておきたくなるような造形美は大切なことだと思います。飾っておくことでいつも目に入るところにおもちゃがあって、思い立ったら触れることができて、だけどつい子供が遊びたくなる、手に取りたくなるようなおもちゃが理想的です。それに飾れるということは、おもちゃを片付けること自体が楽しくなるじゃないですか。



日本に帰ってきて、おもちゃ職人になるためには木工の素人だったので技術を学びたくて木工関係の仕事を探しました。全国の求人を調べてみたら、千葉県の館山で幼稚園の家具を制作している工房が職人を探している。しかも未経験者でも勤められたんです。ドイツの生活で貯金も使い果たしてしまったので、すぐに応募して勤めはじめました。幼稚園の家具だけではなく、建具など幅広い制作をしていたので、木工の基礎を学ぶことができました。1年半、経験を積んでいく中で、もっと木工を学びたい、技術を習得したいと考えるようになると、無垢の木を使った家具を作りたくなりました。また、全国の伝統工芸の求人を探すと軽井沢彫りの家具工房の求人がありました。無垢の家具製作は学ぶことが多くて、しばらくおもちゃの制作のことを忘れるほど楽しかったですね。

おもちゃ作りを再開したのは、子供が生まれたことでした。自分で子供におもちゃを作ったり、友人の子供におもちゃを作るようになり、おもちゃをまた作りたいという気持ちが芽生えてきました。おもちゃのコンペに挑戦してみたり、おもちゃ作りを少しずつ再開していきました。



-       おもちゃを専門にしている作家は珍しいのではないですか?



そんなことないですよ。コンペに参加すると意外にもおもちゃ作家が多くて驚かされます。

ドイツのエルン地方にある山奥の村では村人の7割の人がおもちゃ作りに従事していたりします。



-       関さんにとってのベストおもちゃって何ですか?



あまり、他のおもちゃを見ないからわからないですね。

だけど、強いていうならば、ボールですね。ボールが一個あれば、誰でも遊ぶことができます。

それからベストとは違うけれど、ライバルのおもちゃはTVゲームです。TVゲームくらい子供がのめり込むおもちゃやパズルを作ってみたいですね。



-       ボールとTVゲームは対極ですね。子供や石ころや枝でもなんでもおもちゃにしてしまう。ボールもルールや規定がないから自由ですね。TVゲームは決められたルールのなかで遊ぶおもちゃですね。



そうですね。僕は自分が作るおもちゃに、ボールとTVゲームの両方を行き来できるような要素をいれています。遊んでいるうちに発見できる要素です。例えば、パズルだけでなく、“ごっこ遊び”ができるとか。問題を解くような数学的なパズルなんだけれども、動物をモチーフにするとそこに“ごっこ遊び”の要素が加わって、例えばパズルで動物をたてに重ねると一番下の土台の動物が重そうにしたり、パズルが擬人化します。数学的なパズルだと解いたら終わりだけど、“ごっこ遊び”の要素が加わるとそこで終わらないんです。数学的要素で思いがけないことが起きる発見もパズルの魅力ですし、重ねたパズルが崩れて床に散らばった様子から子供が物語を紡ぐことも同じく魅力だと思います。



あとは、やっぱり小さい頃に木材に触れて欲しいですね。僕は、大人になっても木のおもちゃで遊んだことは覚えているんです。


関さんがデザイン、製作をしたオリジナルの玩具 磁石の力で蜘蛛が予想のしないユニークな動きをする。

 


-       どうして覚えているんだと思いますか?



多分、手触りかなと思います。それから木材は古くなっても、それが味わいになりますから、長く使うことができます。うちの奥さんが子供の頃に使っていたネフのおもちゃは、今も子供が遊んでいます。だからこそ記憶に残るのかもしれませんね。



-       今回、制作をお願いしているバターナイフのお話をしても良いですか?僕も、さっきの関さんのパズルを考える際のお話が今回のバターナイフをデザインするときの感覚に近いなと思っていました。バターをすくうということから導き出される角度や長さを最小制限として、規定する。同時にその制限の中でどれだけ自由に振る舞えるかということを意識してデザインしたんです。



僕は、色をつけているのが良いなと思いました。僕もおもちゃに色をつけています。これはドイツのおもちゃの影響が強いと思います。日本の木のおもちゃって色が少ないんです。車も白か黒が圧倒的に多いじゃないですか。


自作の椅子に座って工房でパズル製作


-       スウェーデンの木工、特に手工芸の分野は彩色することが多いと思います。有名なダーラナへストも真っ赤に塗られていますし。そもそも伝統的なログハウスも赤く塗られていますしね。それに木材と塗料のコンビネーションって、木材製品の新しい側面を見せてくれます。今回のバターナイフたちも塗装前と塗装後では全然別物ですよね。塗装することによって形の自由度が際立つというか



日本のキッチンでは、木材を使うことが多いですけれど、色が付いているものは少ないですよね。そういえば最近さえ箸を買ったんですけれど、上部に細工がしてあって、色の付いた線が描いてあるんです。60年代みたいで良いですよ。


鮮やかな色彩で塗り分けられた作業台や工房の壁
つづく

前の記事 CREATOR INTERVIEW 006 Azzurro Glass Studio
次の記事 CREATER INTERVIEW 004 KANAZAWA ZUKOU