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デザインができるまで solid table

デザインができるまで solid table

このテーブルをデザインするきっかけは、テーブルの制作を手掛けてくれている軽井沢の木工作家 十川渉さんからの誘いでした。しっかりと丁寧に作られた家具は50年も100年も使うことができます。それなのにデザインのサイクルはその家具の寿命よりもはるかに短いのが現状です。スタイルや流行は長くても10年もすれば大きく変わってしまいます。50年使える家具を作るのならば50年使いたいと思えるデザインをする責任があるのではないか?大径木を使ったテーブルはそのような話から始まりました。

大径木を目の前にするとその大木が生きてきた時間に畏怖を感じます。それは製材された木材とは明らかに違う生命の証であり、その悠久の時を経て生まれた形に手を加えることに躊躇させられます。できるだけ手を加えないということこそが尊厳を尊重するのではないかと考えさせられるのです。同時に大木への親近感が芽生え、頼り甲斐がある長老に対する信頼感のような感覚さえ感じるのです。そしてその想いはある記憶へと結びついていきます。スウェーデンでお世話になった老木工職人と初めて出会った日のことを僕に思い出させました。節だらけのごつごつした掌で、少し痛みを感じるほど力強く手を握られたのが握手。刹那に芽生えた職人への揺るがない信頼感。高樹齢の大径木を目の前にしたときの安心感とその信頼感はとても似通っているように思えました。 卓越した職人のようにとても木材と語り合うことはできないけれど、大径木と向き合うことで生まれる信頼感に包まれながら木材に導いてもらうようにデザインしました。

 

 

 

 

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